以上述べたこれ等の図書を含む本文庫を概観して先ず感じることは、経済学上極めて体系的に、書誌学上良くこれだけの古典、就中初版本が集められているということである。従って宮島氏のこれ等の図書に対する愛着は一通りではなく、すべての図書にはカバーをつけて読まれたらしく手垢一つなく所持されていたのである。晩年には眼を患い読書も殆ど不可能な状態であり、それがためこれ等の図書は一冊一冊厚紙をもって包装し、片時も身辺から離されなかったのである。亡くなられる(昭和40年3月)少し前に、その御意思により本学に寄贈されることになったため、筆者自身甲陽園のお宅へ足を歩ぶこと数回、その本の由来、そして今後の保管と運用について細部にわたってお話を伺い、おし頂くような気持で頂戴して来たことを記憶するが、今となってこれ等超一流の諸家の諸本を持つ宮島文庫は、学内学外の専門家達にとっては垂涎の対象であり、同時にそれを所蔵する本学の図書館はまた学内学外に対して大きな誇りを感ずるわけである。
萬里小路 通宗(東西学術研究所事務長)
昭和60年4月28日発行 関西大学図書館報『籍苑』(第20号)より転載
(所属は執筆当時のもの)