細江文庫
昭和22年、本学と多年縁故の深かった故文学博士細江逸記氏(1884年から1947年)の旧蔵書の主要なものを、博士夫人直子氏並びに令息正章氏から、博士の厚き薫陶を受けた故八鳥治一教授の熱心な斡旋によって、本学へ寄贈を受けるに至った。細江文庫は周知の如く、英語学界にとって、得難い貴重な文庫の一つである。昭和25年に’A Bibliography of English Philology Historical and Dialectal,selected out of the Hosoe Collection,Kansai University Library,1950’と題し、重要書を選択して目録を印刷したことがあるが、学内専門研究者は勿論、学外の研究者の熱心な要望もあって、今回、八鳥教授経由のものを含めて、本学所蔵の細江文庫の総目録を編集し、上梓する運びとなったことは慶賀に堪えない。
従来、かかる英語学関係の目録は、本邦においては、二三を数えるのみである。故博士の該博な知識と精緻な研究によって蒐集された貴重な数多くの文献―英国方言に関する研究書―の目録は、英語学研究の盛大になった今日、専門研究者にとって、非常に価値があるのではないかと考える。
この目録の編集は、もっぱら書誌学の専門家である天野敬太郎課長の熱意と努力に負うている。この目録においては、利用者の便利のため、分類方法を書架分類と多少換えている。特色とするところは、図書に附載のBibliographyの類は、これを註記に明記し、又、巻末に著者索引を附載し、これに各著者の生年没年をも努めて記載したところにある。
この目録の編集にあたっては、本学文学部英文学科の協力、刊行については、大学当局の支援によるところ多大であったことを附記したい。なお、かかる貴重な文庫の寄贈をなされた故博士夫人並びに令息の理解と好意に対して、ここに改めて深厚なる感謝と敬意を表明し、併せて故博士の余徳を欣慕し、そしてこの目録が多少なりとも英語学界へ寄与出来ればと希望と念願をもつ次第である。
ここに由来をしるして関係各位に満腔の感謝の意を表したい。
大小島 真二(関西大学図書館長)
昭和33年12月25日発行:『関西大学所蔵 細江文庫蔵書書目』序より転載
(所属は執筆当時のもの)