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2020/05/18

緊急事態宣言下での「折れない心の作り方」 水島先生からのメッセージ

| by 図書館管理者

関西大学では大手書店の丸善雄松堂、紀伊國屋書店と協働し、関大生が今後の人生を大切に生きていくため、是非読んでほしい「お勧めの100冊」を紹介する「新入生に贈る100冊」という取組を実施しています。

 

図書館では、その多くをパソコンやスマートフォン、タブレットで読める電子書籍で提供しており、自宅から本の世界に気軽にアクセスできます。もちろん、新入生だけでなく、関大生であれば「新入生に贈る100冊[電子版]」を誰でも利用できます。

 

今回、「新入生に贈る100冊」のラインナップを飾り高い閲覧数を誇る『10代のうちに知っておきたい折れない心の作り方』(紀伊國屋書店)の著者、精神科医 水島広子先生から次のようなメッセージをいただきました。

 

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緊急事態宣言下での「折れない心の作り方」 

 

精神科医 水島広子

 

ご入学、おめでとうございます。

緊急事態宣言とともに大学生活を始められることになって、本当に残念なことですし、「これからどうなるのだろう」という不安も当然お持ちだと思います。

晴れがましい気持ちで参加されるはずだった入学式、きちんとしたカリキュラムに基づいた教育、そしてこの年頃だからこその楽しい遊び(私自身、大学時代は遊んでばかりでした)。失われているものを考えはじめるときりがありません。

まずはそのことを嘆きましょう。ご自分に優しい言葉をかけてあげてください。期待していたものが失われる、というだけでも大変なショックですし、外出自粛の期限もよく見えない現状では、ものすごく不安を感じて当然です。「そんな中でも頑張らなければ」とご自身を鞭打つようなことは控えていただきたいと思います。ただでさえひどい目にあっているのですから。

同時に、社会状況がどうなろうと、私たちは日々を生きています。それはかけがえのない、大切な人生の一部なのです。「これからどうなるのだろう」という不安にばかりとらわれてしまうと、大切な「現在」が押しつぶされてしまいます。「現在」の質を上げていくこと。それが、生涯にわたって幸せに生きる重要なコツなのです。

この状況で、「現在」の質を上げるには何ができるでしょうか。焦って「何か資格の勉強をしなければ!」と思う方もおられるでしょうが、それは先ほどお話しした「自分を鞭打つことを控える」とのバランスを考えてください。もっと、もっと、という気持ちになってしまうようであれば、いったんやめてみた方がよいと思います。一般に、「もっと、もっと」となってしまうときは、何かに逃げているときなのです。ワーカホリックなどもそうですね。空虚な気持ちを埋めるために、仕事に逃げてしまうのです。

このような時期であっても皆さんにはぜひ、豊かな時間を過ごしていただきたいと思います。

例えば、読書。これだけの空白の期間は、人生の中で二度と得られないかもしれません。読書は、あわただしい毎日では後回しにされがちですが、こんなときだからこそ、よい本を読んでみてください。

よい本は、素晴らしい人との出会いにも似たものがあります。何度読み返してもその都度発見があるような本を読むことは、人と知り合っていくプロセスにも似ていますよね。「一生そばに置きたい」と思えるような本は、常に傍らにいてくれる親友にも似たもの。ぜひ、よい本と出会ってほしいと思います。

私自身は80冊以上の本を刊行してきた著者でもありますが、原稿を書くときは、誠実に人と向き合うような気持ちで執筆しています。その思いが伝わってくれれば、本を介して読者の方と出会うことができますね。

もちろん今はSNS時代。断片的な情報に触れることが多いと思います。短いメッセージが飛び込んでくると、つい読んでしまうことも多いでしょう。内容が衝撃的なものだったら、それをきっかけに落ち込んだりすることもあると思います。

私はこの時代を否定しませんし、自分自身もツイッターを日常的に用いていますが、読書にはSNSにはない特徴があります。

その人の性格にもよるかもしれませんが、最初に読み始めるのがつらくて、何ページかで挫折してしまう、ということはありませんか? 私はあります。もちろん、最初から夢中になれる本もありますが、書き出しのあたりから「この本を全部読めるのかなあ」と心配になる本もあります。

私は、それも含めて読書の醍醐味なのだと思っています。人と知り合うときも、最初は「この人と親しくできるのかなあ」と思い、でも繰り返しやりとりしていくうちに親しさが増していく、ということはしょっちゅうです。

読書にもそれと似たところがあるのではないでしょうか。最初は「うーん」と思っていても、読み進めていくうちにだんだんと夢中になってくる。そして大切な一冊になる。そんなことも少なくないはずです。

もちろん、よい本ばかりではありません。キャッチコピーを並べただけのような本 もあります。そういう本はすぐに読み切ることができます。しかし、それはSNS上の情報と同じで、一瞬の衝撃くらいしか残らないのではないでしょうか。

そんなふうに、よい本かどうかを吟味していくのも、今後の人生の力になります。これだけ情報にあふれた社会では、「メディア・リテラシー」(メディアからの情報を読み解く力)が必要です。それがないと、いろいろな情報に振り回されてつぶれてしまいます。

読書に慣れてくると、「ああ、この人は人をあおろうとしているだけだな」とか「この人の書くことは案外深いな」とか、自分なりの審美眼ができてきます。それは本を一、二冊読んだくらいで身につくような性質のものではありません。いろいろな本を読んで、磨いていく力です。

読書は「現在」を豊かにし、かつ、生涯にわたって使える「目」を培ってくれると言えますね。どうぞよい本に出会われますように。

 

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新型コロナウイルスにより、想像していたような大学生活が送れず、もどかしい気持ちでいっぱいだと思います。このような時だからこそ、「今できること」を考え、取り組んでみてください。

 

水島広子先生の著書『10代のうちに知っておきたい折れない心の作り方』を読むには

https://kinoden.kinokuniya.co.jp/KansaiUeee/bookdetail/p/KP00018138

 

「新入生に贈る100冊」を読みたい方は

https://opac.lib.kansai-u.ac.jp/?page_id=46284
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