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岩崎卯一文庫

 

岩崎卯一博士

「岩崎文庫」は本学第17代(続いて第19、20代)学長・岩崎卯一博士の旧蔵書2,800余冊からなる集大成である。

博士は大正4年関西大学専門部法律科を卒業し、直ちにその年、第1回本学留学生として米コロンビア大学に留学、ドクトル・オブ・フィロソフィーの学位を得て大正10年に帰国。それ以後昭和35年6月に亡くなるまでに実に39年の長きにわたり本学で教鞭をとられ、それこそ文字通りその生涯を関西大学に捧げられたのである。

その間、昭和13年から戦後の22年まで、初代図書館長として今日の図書館の基礎もきずかれたのであり、その意味からいっても図書館としては忘れることの出来ない人なのである。

その人柄、その学風については校友新聞「関大」を始めその他に多くのことが語りつくされているが、それ等によると博士の本学における講義は始めは社会学と社会政策学であり、その後漸次政治学関係の講義へ移り、その主著の一つ「国家の存在性」にも、“社会学の研究から政治学の研究に移行する場合に逢着するであろう主要問題、すなわち、国家本質論の研究に着手した云々”と述べられているように、その蔵書も社会学を中心に政治、経済、法律等、所謂社会科学を以てその大方が構成されている。

“一日為さざれば一日喰わずと云う気分にひたりながら、よみ、考え、書くという日々の書斎生活云々(同書序文中)”とあるように、その蔵書の一冊一冊の主要部分にそれに対する博士の所見であろうか、独特の細かい文字でびっしりと書き込みがなされてあり、その一言一句に学問に対する博士の深い情熱を窺い知ることが出来るのである。

社会学という学問が他の諸科学に比べて新しい分野であるために、この文庫には特に稀覯書というものは見当らないが、それでも社会学の主流をなすものが体系的に集められている。その主なものを紹介すれば・・・、

 

フランス・イギリス社会学

フランス社会学にあっては先ず社会学の父といわれるコントの「実証哲学講義6冊(1830-42)」の第5版が挙げられるが、一般に本書の第4巻に初めて社会学という名称が使用されたといわれている。タルドの「模倣の法則(1890)」「社会心理研究(1898)」と彼の社会学理論の総決算書といわれる「社会法則(1899)」の第8版があり、このタルドと並んでフランス社会学界の二大巨星といわれるデュルケムの著書に「社会分業論(1893)」「社会学的方法の規準(1895)」「教育と社会学(1922)」また自殺現象を社会学的方法の適用によって解明した「自殺論(1897)」の新版が蔵されている。

イギリス社会学には最初にスペンサーの「社会学原理3冊(1876-96)」が見られるが、本書は前述のコントの著作と並んで古典社会学の双へきと称せられるものである。他にホッブハウスの「社会進化と政治理論(1913)」並びに後世イギリス流社会学の典型といわれる「社会発達論(1924)」等も含まれている。

 

ドイツ社会学

ドイツ社会学の中には先ず19世紀末において社会問題を体系的にとらえたL・シュタインの「哲学の光に照してみた社会問題(1897)の第2改訂版(1903)」同じく「社会学の本質と課題(1898)」「社会学入門(1921)」を始め、A.シェフレの「社会学提要(1906)」があり、その他にテニエスの「共同社会と利益社会(1887)の3訂版(1920)」がある。本書は共同社会と利益社会という対概念によって社会を分析把握したもので、彼の名声を社会学界に不滅にした書である。20世紀初頭のドイツ最大の社会科学者マックス・ウェーバーのこの分野におけるものとして、その大著「社会経済学綱要(1921)」の一部「社会学の基礎概念」と「法社会学」が挙げられる。

その他に前述のコント並びにスペンサー流の百科全書的な総合社会学に対して独立科学としての社会学、即ちドイツ流の社会学を打ち立てたものにジンメルの「社会学(1908)」があり、更にフィルカントの「現代における国家と社会(1916)の第2改訂版(1921)」とジンメルの立場に立ちつつ、その学説を更に止揚したといわれる「社会学(1923)」等が所蔵されている。

 

アメリカ社会学

アメリカ社会学に目を転ずれば、先ずアメリカ社会学の父祖といわれているL・F・ウォードの「動態社会学(1883)2冊」「社会学綱要(1898)」「純正会社学(1903)」があり、その他にF・ギッディングスの「社会学原理(1896)」「社会学初歩(1898)」「帰納法的社会学(1901)」、そして社会学を19世紀型のサイエンスから20世紀流のアメリカ社会学への足がかりをもたらしたといわれている同著「人間社会の科学的研究(1924)」等も所蔵されている。ウォード、ギッディングスと並んでアメリカ社会学の建設者でシカゴ学派の基礎を作り上げたA・スモールの著述に「社会研究緒論(1894)」「一般社会学(1905)」「社会学の起源(1924)」等が挙げられるが、このうちの「一般社会学」はウォードの学説を継承したもので彼の代表作といわれており、また「社会学の起源」は社会学の分野でも有名な社会学史的研究書とされている。クーリーの著作「人間性と社会秩序(1902)」「社会組織(1909)」「社会過程(1918)」と「社会学理論と社会調査(1930)」等も文庫中に含まれているが、前三者は彼の社会学に関する三部作であり、後者は社会学に関する彼の論文集である。更にマッキーヴァーの「共同社会論(1917)」は、コミュニティの社会学的概念を確立した古典的書物である。
 

イタリア社会学・その他

最後にイタリア社会学のものとしては、社会学の分野でも最も難解なものといわれているパレートの「一般社会学論考(1916)2冊」があり、文庫中のものはその再訂版(1923)」3冊ものである。

以上の他、著名なものとして更にオッペンハイマーの「マルクス社会学の基本法則(1903)」「社会学体系(1922-27)4冊」H・フライヤーの「社会学入門(1931)」オーストリアの代表的社会学者O・シュパンの「社会学体系(1914)」の「再訂版(1923)3冊」等数多くのものが所蔵されている。

“社会学から国家本質への研究”を標榜された博士の旧蔵書は更に国家学に関する多くの書物を含むのであるが、編輯氏より与えられた紙数も限りのあること。先ずは蔵書中の社会学の分野にそのスポットをあててこれを概観するならば、この文庫は正しく“古典社会学の宝庫”と呼ぶに相応しいのではなかろうか。

                            萬里小路 通宗(東西学術研究所事務長)
昭和60年4月28日発行 関西大学図書館報『籍苑』(第20号)より転載
(所属は執筆当時のもの)
 

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