イギリスの詩人チョーサーを生涯の研究対象にし、萬葉集をはじめ古典籍の熱心な蒐集家でもあった故廣瀬捨三先生旧蔵書のすべてが、ご遺族により関西大学に寄贈されました。 先生が長逝された平成14年に本学へ寄託されていたもので、月日を置かず平成15年7月、本学へ無償で譲渡されています。
廣瀬先生は、明治44年東京市に生まれ、関西大学予科を経て、関西大学法文学部文学科を卒業。大学院では中世英文学を専攻されました。関西大学文学部教授のときには、文学部長、教養部長、大学院文学研究科長、図書館長を歴任され、昭和44・45年、本学でも頂点に達していた大学紛争時、学長代行としてその収拾に腐心されて大学の正常化をはかられました。つづいて大学改革案にもとづく初の学長に選ばれ、昭和48年までつとめられています。 昭和57年に関西大学名誉教授。昭和46年、「チョーサー『カンタベリー物語』の研究」で文学博士。
専攻は中世英文学でしたが、予科の学生のころから、萬葉集をはじめ古典籍の熱心な蒐集家であったことはよく知られていました。岩波書店の『図書』1994年3月号に「萬葉集と私」と題してその蒐集ぶりが書かれています。
昭和54年に先生が入手された天明元年書写の萬葉集が影印版となり、「校本萬葉集別冊」として岩波書店から出版されました。これが、世にいう「廣瀬本『萬葉集』全二十巻」で、藤原定家の流れをくむ非仙覚本系の唯一全揃いの写本であることがわかっています。本学では、先生が蒐集された全蔵書を「廣瀬文庫」と呼んでいます。